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よー、まいごっど

歴史創作と一次創作。

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さんじゅうに、一日一小話




 080820
 *GenesisWar-Notae-「今だけでいいから、こうしててね」


 あ、と声が出た、と思ったらすぐ目の前に今ふんでいるはずの石だたみがあって、と思ったらがつん、と、星が、
「……いたい……」
 鼻、特に鼻が。おそるおそる顔を押さえながら起き上がる。ちらっと見えた手はこすれて赤くなっていた気がするけれど、あんまり見てたらもっと痛くなるから見ないようにする。
 でもやっぱり痛い。鼻も顔も、がんばって見ないようにしてる手も、それからひざもじわじわ、痛い。
「おい、」
 うつむいた顔の前に、にゅっとてのひら。広げられたそれは大きくて、わたしはその手があたたかいこともやさしいことも知ってる。
 目の前の手をたどっていけば、あきれた顔をしたアイレがいる。ちょうどひかりをせおうようなところに立っているから、少しだけまぶしい。
「なんで何もないところでこけるんだ、おまえは」
「あう……」
 はずかしくてちょっと頭を下げる。だって町に買い物に行くなんて初めてなんだもん。しかもアイレとふたりっきりだから、町を見たらいいのかアイレを見たらいいのかわからなくて、ずうっときょろきょろしっぱなしだったんだもん。
 頭の上からためいきが聞こえた。あう、またあきれられた。
「ん」
 目の前のてのひらが突き出される。
「う?」
「手」
「手?」
「……っあー……」
 見上げたらアイレはそっぽを向きながら、わたしの目の前にないほうの手でがじがじと頭をかき回していた。アイレはしばらくそれをつづけて、聞き取れなかったけどなにかをぶつぶつつぶやいてから、ちらっとわたしのほうを見る。
 それから目の前のアイレの手は、ちょっとだけうろうろしてからわたしの手をつかんだ。
「こんな調子じゃ夜になるだろ」
 こんなちょうしっていうのがどういう意味なのかはわからないけど、とにかくアイレが手を引っぱってくれてやっとわたしは立ち上がる。やっぱり顔も手も足もじわじわ痛いけど、アイレににぎられた手のほうがもっとじわじわする。
 アイレはこっちを見ない。わたしの手だけをしっかりつかんで、そのまま歩き始めた。
 これは手をつなぐっていうことで、お姉ちゃんとだってしたことがある。けどなにかちがう、ちがう気がする。お姉ちゃんの手は少し冷たくて、アイレの手はあったかい、それだけのちがいじゃなくて。
 きっとすぐに、こんなときは、終わって、しまう。けど、ずっとこのままでいたらいいなあなんて、思うのはたぶんアイレだからだと思う。
「……まずは、薬局だな」
 ちいさくアイレがつぶやいて、またためいきが聞こえたけれど、わたしはこっそり笑った。





リナリア(ミューとアイレ)
BGM:sm3068524【KAITO】リナリア
 ...歌詞も声も原曲の方が合ってるのかもしれない。けどカイトの声の方が優しくて落ち着く分切ない。
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