080828
*版権?/ボカロ「そもそも“愛してる”が届きませんでした」
“愛してる”という言葉の意味を知ったのは最近で、ということは自分はマスターのことを愛してるんだなあと酷く納得したものだけれど、さて、“愛してる”には付き纏うものが多いらしい。
その“愛してる”に関して、カイトには合点のいかない話が二つある。一つは「“愛してる”を言えば言うほど愛が薄っぺらくなる」、もう一つは「“愛してる”を言えば言うほど愛が深まる」。このまったく逆のベクトルを持つ話、果たしてどちらが本当なのだろうか。
と思ったので実際試してみることにした。もし前者が正しいのであればマスターへの愛が薄れてしまうかもしれない、と一瞬考えはしたものの、自分に限ってそんなことはありえないだろうという結論に至ったので、心置きなくマスターに“愛してる”を投げつける。
「マスター、愛してます」
まず一回目の“愛してる”。パソコンのモニタに向かっていたマスターは、口の端を引き攣らせて動きを止めた。この反応は予想外で、カイトは小首を傾げた。とりあえず二回目。
「愛してます」
マスターは座っている椅子のキャスターを派手に転がして後ろに退いた。訳が分からずぱちぱちと瞬きを繰り返せば、どこか青ざめた表情でマスターは呻く。
「や…ヤンデロイド…!」
「は?」
「やっぱりそうなの? お前もアイスピックとか持ち出しちゃうの?」
「え、あの、マスター?」
ぎゃーウチアイスピックはないけど包丁とか果物ナイフとかハサミはあるしぎゃー!と一息で捲くし立てながらマスターは台所へ駆け出してしまった。続いてガタガタと食器棚やら何やらを漁る音が続く。取り残されたカイトは言えなかった三回目の“愛してる”を飲み込んで、マスターがさっきまで見つめていたモニタにふと目をやる。そしてまじまじと見つめてから、また首を傾げた。『KAITOがアンインストール』?
「……マスター、ヤンデレって何ですか?」
刃物はボーカロイドの手の届かないところに置きましょう(KAITOとマスター)
...“色気のあるKAITO(絶滅危惧種)”でタグ検索してたらどうにも耐えられなくなってやった。しかし色気はない。自重? そんなものは燃えるゴミの日に捨てましたが何か?